もともと地毛なのに、何で黒に?天然なのに、ストレートパーマ?学校の「頭髪指導」に納得がいかず、毎回悶々とした思いを持っているあなたに、「頭髪指導のなぜ?」つまり、学校の事情、言い分と教師の思いを紹介します。
異動初日
4月、学校を変わるはじめての日、体育館のステージに上がり赴任してきた教師が紹介されまする。高ぶる気持ちを押さえるように「カラフル」なカラーが眼に飛び込んできます。
「ちょっと、がんばらねば・・・新しい出会いも、あたまはやっぱり頭からか・・・」赴任のあいさつもそこそこに、これから「頭髪指導」に費やされる時間と労力を考えているうち、ため息が漏れてきました。
壇上から見下ろすと、本当に生徒みんなの頭のてっぺんすべてが見渡せるのです。「以前の学校の「眺め」とはまるっきりだ。また一からやりなおしだ。」
多くの教師の仕事は実に多忙です。やらなければいけないこと、やりたいはことたくさん。ここまでやったら終わりという境界線はなく、自分で線引きする仕事なんです。
考えてみて欲しい。あなたの前にいる教師はなぜ教師という職業を選んだのか?教えることが好き、学校、こどもが好き!・・・公務員だからもありでしょうが、だいたいは大志を抱いて教師になったのです。
「正直なところ、こんな事に大事な時間を使いたくない。もっと、いろいろなはなしがしたいし、こどもたちのために使いたい」。それが、現在の学校では教師と生徒とが対立する構図が出来上がってしまっています。教師はあなたがたの「敵」でしょうか?
「亜麻色の髪の乙女」 詞 橋本淳 曲 すぎやまこういち 歌 ヴィレッジシンガーズ
頭髪指導のシステム
「頭髪自由」という学校は、一部の私立、定時制、通信制高校等を除いてほとんどないでしょう。それには「理由」と「事情」があるからなのですが、これはひとまず置いておきます。
私が経験した数々の学校では、頭髪指導について事細かく生徒指導内規に定められていました。おかしなことで、長さ(長すぎ、短すぎもだめ、なぜか男子に限っての短髪は可)についても定めがありました。
このように頭髪指導については論文が書けたり、研究の対象にもなってたりするので奥がとにかく深いんです。そこで、今回は、「茶髪」と「地毛」に的を絞って考えていくことにします。
学校ごと「頭髪指導マニュアル」は少しは異なるでしょうが、だいたい、このような手順です。
①日常(登校指導、各集会、授業その他)で各教師が「頭髪チェック」
授業ごとに教科担任教師が出席簿にはさんである「チェックカード」に記入する。出席簿ごと授業終了後に職員室に持ち帰るので生徒の目に触れることはない。
②期限を決めて直してくるよう指導(全体の頭髪指導の前に)
③全体頭髪指導(指導部員、担任副担任)
ここでも「違反者」は期限まで直すよう指導し、家庭への依頼文書を持たせる。
④担任確認ではなく、直接指導部へ行き確認を受ける
⑤それでもなおさない場合、「帰宅指導」、学校での「染髪(せんぱつ)」という強硬手段
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頭髪指導のストレス
ただでさえ、授業時数が危なくなっている生徒を教師は帰宅させたくはないですよ。自己都合、自らの意思での違反なので授業の補充、補講もないでしょう。
家庭とのやりとりでもほとんどは理解は得られますが、一筋縄ではいかない家庭が必ずあります。「学校の勝手で帰したのだから補充何とかしろ」「そもそも茶髪なぜだめなのか?こどもにはなおさなくていいと言っている」分かってもらえない辛さ、切なさで胃がキリキリ痛い!
気持ちは分からないでもありませんが、そもそも学校はなぜ、頭髪指導をしているのか、ここを家庭で親子で一度話し合ってみて欲しいと思うのです。
私個人からみたら、ピアスも軽い茶髪もウェーブも何ら問題はないし、むしろ学校抜きにしたら、「似合ってる」と思う生徒も実際います。口に出しては決して言えないですけどね。
しかし、「公」の場である「学校」でそんなことはおくびにも出せないのです。全体でこうと決めたのであれば、それに従わなくてはいけないのが「学校」というところなんです。
このつらさ、もどかしさはあなたがたの学校教師もきっと感じていることでしょう。
抜け駆けはNG!
あなたがた生徒からしたら、教師の頭髪指導に関する「基準」は一致しているものと当然思うことでしょう。しかし実際、教師集団というものそう簡単にはいかないのです。各クラス担任、教師によって判断基準が違ってくるのです。
私が自分のクラスの頭髪指導で苦しみぬいた経験は「ブラック校則?頭髪指導の難しさ~心に響かなかった私の失敗~信じて待つ~」で詳しく話していますので、ここで深入りはしませんが、教師サイドは常にこの「基準違い」に悩まされている現状を少しは分かってあげてください。
全体の場で行われる頭髪指導でさえ判断がわかれ、生徒間で「え~これでOKになっちゃうの?」「あなたより薄いのにこれでダメなんだから信じられない!!」なんてことはいつものこと。また、各クラスで担任教師の指導が行きとどいているか否かによって、どうしようもないくらいの「差」が生まれてきちゃうのです。
私も自分のクラスのこどもに泣きつかれたこと数知れず。自分はキチンと直しているのに、あっちのクラスはあれで「OK?!」 もちろん、まったく「直していない」という訳ではないのですが、ちゃんと、担任から「OK!」をもらっているというのです。
生徒からしたら、これでは不公平感アリアリなのは当然と思います。どうしても、機械などで測るわけではなく、あくまでも人の目視による判断が、キッチリカッチリといかないのは仕方ないこと。
しかし、誰の目から見ても分かる「抜け駆け」つまり、「スルー」している教員がいると問題が難しくなるのです。
統一感がなくなり、そこに不公平感が生まれ、キチンと直しているこどもの指導ができなくなり、結果として「頭髪指導」自体が体(てい)、意味をなさなくなってしまうからなんです。
実はこれは、教師間でもおかしいとだれもが思っていることなんです。しかし、教師お互いの領域に入り込まないとおかしな不文律が存在し、お互いに注意し合うということは滅多にないのです。
事実、私が同じ学年教師に、「違うじゃないだろうか?」と申し入れをした時も、「自分なりの基準でちゃんとやっている」とあっさり否定されました。正直、私の場合、同僚との生徒指導のことで受けるストレスが一番イヤでつらかったのでした。
こういう場合、あなたがた生徒は教師にハッキリ「おかしいと思う」と言葉だけではなく「文字」にして、まずは、担任におかしな現状を訴えてみることができのです。
キチンと納得はいかずとも、規則を守っているものの当然の権利です。
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地毛?染めた?
実は毛色の「基準」以上に教師を悩ませるのがこの問題なんです。教師は生徒を信じたい!特にクラスのこどもらの言うことは信じたい!しかし、人間弱いもので生徒も嘘をつくときがある。「染めた染めない」の押し問答のはじまりです。
そこで考え出されたのが、どこの学校でも発行している、「地毛証明書」。基本的に家庭にで署名捺印してもらうだけであるから(学校によっては理美容院等の証明が必要なところもあると聞く)お墨付きは簡単です。本当は染めているのに「証明書」という威光を振りかざして、うまく切り抜ける生徒、家庭がいる事実に甘んじなければならなかったのはほんと辛かった。
問題は本当の本当に「地毛」であるのに、「染めた」とされてしまう生徒が少なからずいる事実なのです。
自分と誇りを守るために!
本当にもともと「地毛」「天然パーマ」であれば、直す必要はないと私は思います。あなたが取るべき方法は次のうち、どちらかです。
①自分、家庭の意思を曲げ、学校の「指導」に従う
②直すことを拒否
②の「指導拒否」については、覚悟してください。あなたの人権と誇りを守るために、多くの時間と労力、場合によってはお金もかかってくることを。法務省の「こどもの人権110番」(0120-007-110 時間 8:30~17:15)での見解も、もともと地毛であるものを強制的に直させるということは「人権侵害」に当たるということです。学校、自治体で話を聞いてもらえる状況でない場合はこちらに電話してみましょう。もしかしたら、解決の糸口がつかめるかもしれません。
これとは逆のケースも紹介しましょう。もともとの黒髪を、わざわざ染め上げたのに、学校側から染髪され黒にされたということで訴えを起こした家庭のケース。染めさせられたことによって皮膚炎になり、学校側の文書による謝罪と損害賠償請求を求めての裁判を起こしました。裁判所は,この件で、生徒、父母らの損害賠償請求を全面棄却しているのです。「地毛、天然」は仕方ないが、嘘は通らないということなのですね。
茶髪がだめな理由
「誰に迷惑をかけているわけでもないし、自分の髪をどうしようと自由だろう!」というかもしれません。果たして「誰にも」迷惑をかけていないと言い切れるでしょうか?繰り返し聞きますが、本当にそう言い切れますか?答えはNOなんです。
あなたが、就職進学の試験・面接に行く時、果たしてその頭で行けるでしょうか? 実際行きますか?自分のスタイルをここでも貫き通せるでしょうか?それであったなら或る意味潔(いさぎよ)いです。しかし、こんな時だけ直すとしたらそれは実に情けなく恥ずべき行為だと私は思います。自分が属している学校、周りの生徒、親のことを考えもせず、自分中心すぎやしませんか?
何回も親御さんが学校に呼び出され、場合によっては仕事場にまで電話され、親に迷惑心配をかけているというのに、「誰にも」迷惑をかけていないとは言えないですよね。
何より茶髪がだめな理由は、社会とはそういうことになっているからなんですよ。私のクラスの生徒ではありませんが、ファッション業界、理美容関係に進む場合であっても最初の試験面接の時、キチンとできず、落とされてきた生徒を私は何人もみてきました。
例外として、ある特殊分野で(職種を言うと特定されてしまうので控えます)働こうとしていた生徒が茶髪化粧で合格!という例もありましたが、本当にこれはレアなケース。卒業後も、化粧のセンスが要求される仕事であったからなのです。
ここの学校の生徒は茶髪が多い→荒れている→地元企業「今年から採用を見送ろう」という図式が成り立たないと言えるでしょうか?あなたがたの制服でどこどこの学校ということはすぐに地元住民であったなら分かるはずです。つまり、あなたは学校の看板を背負って街を歩いているのです。制服が学校ごとに違うのもこういう意味もあるんです。
繰り返しになりますが、私個人からしてみたら、髪の色、ウェーブ、長さなどはどうでもいいこと。これらも本人の自己表現の一つであるし、自由に振る舞える権利でもあることは承知しています。内心「本人に似合っているな!」って思う時もあります。
しかし、学校の「生徒」であるからには、あなたが属している学校の「ルール」つまり「校則」に従わなければならないのです。校則はある意味、個人を拘束するものです。
これに従えないというのであれば、このステージから降りざるを得ないでしょう。入学前から「茶髪OK!」とはまさか思ってはいないでしょう。それを分かっていて入学して、入ってしまえばやったもんがち!「やっぱり従わない」というのはちょっとひどくはありませんか??
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「茶髪OK!」の学校だってあるんです
それは、通信制高校、サポート校、そして定時制高校などです。学校教育法下の学校ではありませんが、フリースクールなどもそうですね。通信制高校であっても基本的な校則はありますが、生徒の主体性を尊重する所がほとんどです。
つまり、法律と最低限のマナーさえ守っていればあとは自由です。例えば髪の毛の色は何色でもOK、ピアスOK、学生でも20歳を過ぎていれば酒タバコもOK。(もちろん校内、校地内はダメですよ)
こういう高校に最初から行けばいいだけのはなしなのです。
高校を出ればいつかは自営でない限りは職に就くことになるでしょう。そこでは、そこなりの「ルール」が存在します。お金という、時間、労力を投資した結果得られる「自由」と引き換えにあなたがたは「義務」というものも背負いこむことになるのです。
社会に出るまでのトレーニング、我慢我慢~と考えられないでしょうか?教師とあなたは決して敵同士なんかではなく、「師弟関係」なのだから。
ちょっと考え方を変えるだけでいいのです。そこまで意固地になるより、高校時代はやりべきことがたくさんありますよね。学生時代は短いです。
オシャレは卒業してからいくらでもできますよ。それよりも「今しかできないこと・・・」に目を向けてみませんか?
※学校の頭髪指導と同じように、いつも問題になる化粧指導についての記事はこちら・・・
「高校で化粧を禁止する理由~化粧指導の是非~化粧指導はどうあるべきか?」
そして、結論!
そもそも学校と生徒は敵なのだろうか?
なぜ、頭髪指導があるのかを考えるのもまた意味がある!
本当に地毛なら直す必要まったくなし!
嘘はいけない!
権利を振りかざす前に、義務(学生の本分)について考えてみよう! Sponsored Link