NHK朝ドラ

『ひよっこ』第18週106話~妻のプライド、女の意地~せつない再会

105話では嵐前夜のプロローグとして、美代子さんのこころの揺れがていねいに描かれていました。
ものごとには何でも3つの見かたがあるそうです。例えば「いじめ」であったなら、「いじめられる」人と「いじめる」人
そして、神様だけが見えている、高いところから物事、出来事をとらえる見方だそうです。
美代子さんはそれまで外していた指輪をはめ、敵地?東京へと向かいます。
その間、みね子親子を待つ世津子さんは何を想っていたことでしょう。彼女の心中を想うと泣けてきます。
たしかに美代子さん、谷田部家サイドに立てばひどいことでしょう、許されない事でしょう。
それでも仕方がないことってあるのではないでしょうか?
だって人間なんですもの・・・

(実・世津子ペア)対(みね子親子)の図

やっぱり角のある長テーブルだったら、この図になってしまうでしょうね。
円卓とまでは言いませんが、せめて正方形のテーブルだったら・・・と思ってしまいました。
明らかにこの図は対決スタイルです。

105話のボンネットバス車中での次郎さんと美代子さんの会話をおもいだしてみてください。

怖いんだ、いぐの
でも私、がんばってくっから
だがら応援して、お願い・・・

おう!がんばれぇ美代子!!

怖いのは「何」についてこわいのでしょうか?
がんばるって「何」をがんばるのでしょう?

それはおそらく、
現実と向き合う怖さ、そしてもしかしたら実さんが、もう世津子さんのものになってしまっている・・・そんな予感がする怖さであり、
ズバリ、実さんを取り戻してくること~これが美代子さんのがんばりでしょう。
「がんばってくっから」と自分を奮い立たせなくてはいられない美代子さんの弱さが見事に描かれていました。

そして、自分が実さんと積み重ね、築き上げてきたながい時間と家族の絆、そのプライドの象徴が「指輪」でしょう。
指輪が槍(ヤリ)という「妻」としての攻めの武器であるならば、家族写真は「谷田部家」というスタンドをバックに背負った
守りの、さしずめ楯(たて)としてのアイテムなのでしょう。

それまでに完全武装していってもなお、美代子さんは不安で不安でこわくて仕方なかったのでしょう。
世津子さんの家ドアを開け、入ってきた表情が痛々しいです。恐る恐る顔を上げていました。
彼女のおずおずとした仕草、表情は話し合いが始まる前まででした。

その後は、美代子さんにまくし立てられて防戦一方の世津子さんが逆に痛々しくて見てられませんでした。
実・世津子ペアの図は最初からなかったのでした・・・

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みね子と偶然会わなければ、自分が黙っていれば・・・

恐らくこのフレーズを幾度となく頭の中で世津子さんは繰り返したことでしょう。

「今日は、夫を、引き取りに参りました」と言われ観念したような、来るべきものがきてしまったような諦念に近い複雑な表情を見事にミックスさせて
「はい」と世津子さんは応えます。
家族写真を見せられても、頭を下げたまままともに見ることができません。
現実を直視することへの恐怖、そして認めたくない~という彼女、最期の意地がそうさせたのかもしれません。
あとは、ただひたすら謝り続ける彼女がかわいそうでなりませんでした。

お母ぢゃん美代子さんが言ったことはもっともです。その通りです。
本当に美代子さんの言葉通り、家族ともども大変な思いをしていままで生きてきたのですから、お父ぢゃんに会える日を夢見て。
世津子さんも当然、いけないこと、間違ったこととわかっていたはずです。
それでも実さんと二人で暮らし続けていたのは、恋から始まった愛情があったからに他なりません。

匿っていた理由を美代子さんから尋ねられ、実さんの言葉「あの、それは、私が・・・」を優しく世津子さんが遮ります。

出ていってほしくなかったんです
いけない、間違っていると思いながら
いつかはそうしなければいけないと思いながらそのままにしてしまいました
本当に申し訳ありません
お詫びのしようもありません
楽しかったです
一緒にいるのが
たしかにこの人は、谷田部実さんという人なのかもしれません
でもここに来た日からは、名前のない人でした
雨の日に出会ったので、雨男さんと呼んでいました
はじめて・・・
早く家に帰りたいと思った
生きてきてはじめて・・・
そんな時間でした
でもやはり、許されることであるわけなどなく・・・
偶然みね子さんと知り合ったのも
そういうことだと、思います・・・

世津子さん最期の実さんへの愛情表現だったのでしょう。
彼女のこころからの叫びでした。
彼女には背負っている何かがあるのでしょう。寂しすぎます、すべてが・・・
その寂しさを埋めてくれたのが実さんであり、一人の女性として彼女を見続けてくれていたのも彼だったのです。

一方、実さんが、みね子だけでなく美代子さんにも連発していた「ごめんなさい」の意味がいろんなふうに解釈できてしまって
複雑ですが、これの深追いは野暮ですね。
美代子さんが警察で「谷田部実という名前があります!」って泣きながら叫んでいたシーンがありましたね。
その夫が実さんが、実は「名前のない人になっていた」訳ですから美代子さんにとっては皮肉以外の何物でもありませんが、これは岡田さん、確信犯ですね・・・
ここにつながっていたわけなのですか。すごいテクニックです。

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?の連続の設定、演出・・・

今回ばかりは、言わせてください。「ひよっこ」賛歌ばかりが聞きたい方はごめんなさい。飛ばしてください。
前回も話しましたが、今回は前回以上に感情移入が素直にできず、「?」の連続でした。
それは、僕が天の邪鬼なせいかもしれませんが、それ以上にこれまでの実さんのイメージと106話の内容があまりにもかけ離れているせいなのです。
それとも、実さんは記憶を無くしただけでなく、性格も変わってしまってあの優しさまで無くしてしまったのでしょうか?
「そんなの、イヤです・・・」
みなさんにはどう映りましたか?

「実さん、帰りましょう」って言われたからって、一礼しただけで「ハイ、それでは~」ってなるでしょうか?
だって、実さんですよ。みね子親子のあとをひょこひょこ付いてあるってく実さんはまさしく「ひよっこ」のような感じでまるで立場逆転です。
滑稽ですらありました。
あれじゃ、写真という「事実」を見せられたら誰にでもついていっちゃいそうな感じですよ。

すずふり亭で受けた一時の恩を決して忘れず、家族にもそのことをていねいに伝えた実さん。
人様から受けた恩、愛情を忘れる人では決してありません。
前記憶一切合財なし~世津子さんとの二年半がすべて~の「雨男」にしては、眼の前にいなさる世津子さんが、すべてのはずじゃありませんか?
二年半の詳細は描かれてはいませんが、彼女のセリフからその濃密さが伝わってきます。
世津子さんの愛情も十二分に感じていたはずです。

せめて、世津子さんが助け舟を出してくれた言葉を受けて、
「もう少しだけ時間をくださいませんか?」って美代子さんに言ってほしかったです。
美代子さんから普段の優しさやら余裕がなくなっているのは仕方ないにしても、実さんには、ちょっとじゃなく大ガッカリさせられました。
あれじゃ世津子さんがかわいそう過ぎます。
三人がでていった後、一人残された部屋での彼女を想うともうだめです・・・

有名女優が見ず知らずの記憶を無くした男を二年と半という長期間に渡って「監禁?ではないですが」。
あり得ない設定では、思わず埼玉少女誘拐監禁の寺内樺風容疑者を思い出してしまいました。
これはドラマなので致し方ありませんが、これまでの僕たちの実さんイメージをぶち壊す今日のシーンだけはどうしても受け入れられないのです。
まあ次回以降で今日の実さんの無礼の訳が解き明かされるのでしょうから、ちょっとだけの辛抱ですね。
これも岡田さんのワザだったら凄すぎます。

やっぱ、みね子だもんね・・・byトッキー

偶然みね子さんと知り合ったのも
そういうことだと、思います・・・

今回の最重要フレーズでしょう。
前週タイトルは「運命の人」・・・
世津子さん、みね子・・・それぞれがそれぞれにとって「運命の人」だったのです。

みね子という人であったからこそ、世津子さんはこれまでの「しあわせ」を棄てる決心をしたのだと思います。
みね子にはそういう「力」、人間としての人を引き寄せるパワーがあったからなのでしょうね。

今日のお話は世津子さんの肩を持つ内容に偏っていたかもしれません。
美代子さん一家の心労、辛労も見てきただけに十分、美代子さんの気持ちは察することができます。

しかし、前回の繰り返しになって恐縮ですが、

人は無くしてしまったものばかり悔やむ生き物
今、あるもののありがたさ、しあわせに気付ける人はそういない・・・

と僕は思うのです。

助けてくれたこと、二年半という間、生活をともにしたことに対するお礼だけではなく、
一番「ありがとう」を言わなくてはいけない事は、匿っていた事実を正直に話してくれたことだと思うのです。
下手すれば刑事事件で大女優のスキャンダルですが、だまっていりゃ済むものをワザワザ申し出てくれたのです。
彼女が申し出てくれなければ、もしかしたら一生会えなかったかもしれない・・・

彼女のしたことは許されることではないかもしれませんが、鈴子さんが言ってたじゃないですか・・・

生きて会えたということ
元気だったということ
そして、また会えるということ

会えるどころか、明日からはずっと顔会わせられますよ。
それだけですごいことじゃないですか。

みね子が引き寄せた「縁」
そしてこれから紡ぎ直していく家族の「絆」

どっちもとっても大切なもの・・・

NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ひよっこ」第18週「大丈夫、きっと」第107回

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