人を恋う気持ちに、家族であろうが恋人だろうが変わりはありません。心の底に流れるのは、その人を想い慕い、大切に想う気持ちです。
その想いが強ければ強いほど、想いが届かなかったりスレ違ったりしたときの切なさは、はかり知れません。
世津子さんの想い、みね子のお父ぢゃんへの愛情、実さんの葛藤~それぞれの想いが複雑にクロスして三人を、まわりのみんなを惑わせます。
これも「運命」なのでしょうか?
この運命もみんなが、より深い絆で結ばれるための試練であってほしいと切に願うのみです。ただそれだけです・・・
「大丈夫、きっと・・・」
われらがみね子嬢は、奥茨城村が大好きでホントはず~っとこの土地で大好きなみんなに囲まれて過ごしたはずです。
お父ぢゃんが行方不明にならなければ・・・
東京へ行って働き、家計を助ける傍らお父ぢゃんを探す~
これまで自ら何かを決めたり自分からものごとに向かっていくようなこどもではなかったみね子が、自分で決めたはじめてのことです。
東京に出てきてからは、向島電機の澄子に次の就職先を譲ってあげたり、島谷さんとの別れを決断したり~とみね子にとってはとても辛い決断をしてきました。
どんな時も前を向いて歩き始める健気なみね子の姿がそこにはありましたが、今回だけはみね子がかわいそう過ぎます。
かけてあげることばもみつかりません・・・
何よりあれだけ感情を爆発させて、茨城弁まるだしにして我を忘れたみね子ははじめてです。
どれだけ、この事実、現実がみね子にとって受け入れ難く辛いものだったかが伺い知れます。
家族・・私の家族・・私はどんな人だったんでしょうか?
本当に・・私のこどわがんないの?本当に?
はい
本当なんだ・・
ごめんなさい
102話でも、ごめんなさい~の後にそっと優しく握っていたみね子の両手を返した実さんですが、
今日のこのシーンでも実さんの優しさと誠実さがよく現れていましたね。
みね子に傘をそっと差し出して渡したあとに自分の傘を開けました。
実さんの相変わらずの優しさを目の前にしても、その優しさを噛みしめる余裕はありませんでした。
「本当なんだ・・・」と辛すぎる現実と向き合うだけで精いっぱいなのでした。
ハタチになったとはいえ、まだまだお父ぢゃんに甘えたいこどもの部分も残しているみね子です。仕方のないことでしょう。
そして、お父ぢゃんが娘に対して他人行儀で「敬語」を使っていることが、更にこのシーンを物悲しく切ないものにしています。
また、気のせいか実さん、あのなつかしい奥茨城弁が消えてしまっているようです・・・
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2年と半という決して短くはない、「空白」
世津子さんと実さんが暮らしてきた時間が二年半というものであることが今回のお話で明らかになりました。
つまり、世津子さんは記憶をなくした見ず知らずの男を、2回の接触だけで自宅に招き入れそのままずっと一緒に暮らしてきた~ということです。
そして、その間、実さんに請われるまま病院にも警察にも行っていない~
本人に強く止められたとのことですが、本人のためを思えばこそ届ける必要があったのではないでしょうか?
(2年半も病院行っていない実さんも、頑丈すぎてすごいです。さすが奥茨城人です)
そこには、世津子さんのこの生活を手放したくない~という想いがあったのは何となく伺い知れますね。
また、ひどい雨の中、雨を避けるわけでもなく、2度もずっと同じ場所同じベンチで途方に暮れている設定、演出にもちょっと「?」が僕的にはつきましたが、
視聴者の思っているようにすべて物語が運ぶわけでもありませんので仕方ありませんね。
せっかくのなごみシーン一切なしの見せ場中の見せ場であった103話に、素直に感情移入できなかったのがちょっとだけ残念でした。
世津子さんの切なさ寂しさ悲しさ・・・
小さいころから芸能界で活躍し大人の生活に触れ、学校にも行っていない~
どんな豪華な料理よりもあったかいごはんがあれば~という設定から世津子さんの素朴、実直さが伝わってきます。
そして、有名女優が雨の中ずぶ濡れで一人佇むみすぼらしい男に二度も傘を差し出し声かける~
彼女の優しさが伝わってきます。
ずっと前の回でもちょっと触れていましたが、普通に接してくれるのが一番うれしいし、そうしてほしいんでしたよね、世津子さんは。
きっとそれまでの彼女は、華やかな芸能界に身を置いていても、ひとり寂しい思いをたくさんしてきたんだと思います。
そんなところに現れた、自分をまったく知らず、目の前の自分だけを見てくれている実さん、新鮮に映らないわけないです。
おまけに歳格好も似ていて(菅野美穂さん、現在40歳、沢村一樹さん50歳)、誠実&やさしい、おまけにシブい~ときたらノックダウンかもしれません。
前々週の「アイアイ傘とノック」の傘とノックはここにも通じていたのですね。(ちょっと無理が・・)
ひとり、階下での親子の様子を切なく見守る世津子さん・・窓枠の雨だれが物悲しいです。
実さんとの回想シーンがオレンジでノスタルジックっぽくて泣けてきます。
ただいま
あっ、お帰りなさい
ご苦労さんでした
うん。撮影早く終わらないかなと思って。最後早口でセリフいっちゃった。
あっ、お土産。たい焼き買ってきたんだ。食べよう。
おのセリフに世津子さんの実さんへの想いがぎっしり詰まっています。
まるでタイヤキの「あんこ」のようですね。
家に帰って早く実さん【彼女の中では雨男さんでしたね】に会いたい~
ウチで二人でタイヤキを頬張る~
そんなささやかなしあわせに終始符を打つ一大決心をした世津子さんを想うとき
世津子さんもまた、「ひよっこ」に登場するみんなといっしょだな、優しすぎるなと思うのです。
みんな自分がかわいいです、しあわせになりたいです。
でも、大切な人と大切な人のまわりの人たちのために自分の幸福をなげうつことができる人ってのはなかなかいないような気がします。
みんなさみしいから・・・
みね子と同乗したクルマの中で、みね子のお母さんのことをさりげなく尋ねていたのが気になる~と前に書きましたが
やっぱりそうだったのですね。
みね子が実さんから差し出された「傘」が、2年半前、世津子さんから受け取った慣れ染めの「傘」だったとしたら
それぞれの「想い」がバトンタッチされたことになります。
アイアイ傘もささずに終わってしまった恋、お父ぢゃんとの再会アイテムしての傘、みね子にとって「傘」は将来ちょっぴりホロ苦い想い出になりそうですね。
早くこの辛い出来事が、想い出ばなしとなりますように。
そして、この物悲しい雨が止んでくれますように・・・
NHK連続テレビ小説 『ひよっこ』第18週103話 2017年7月31日放映