男の涙は人に見せられぬもの、ひとり、涙流すとき何を思い、誰を想う?
いちばん悲しいことは、いっしょに泣いてくれる人がいないこと・・・
いまの実さんには家族があり、そして誰より彼を想ってくれる美代子さんがいます。夫を慮って陰でひっそり添い泣きする美代子さんのいじらしさ。
彼女のこの想いは、断じて一方通行で終わるようなものではないはずです。
彼女の、家族の深い愛情にあらためて突き動かされての涙でしょう。
ほんとうに、いがった!!
実さんが谷田部家に戻ってきて、もうひと月が経ったのですね。早いものです。
あの楽しがった田植えから一カ月、季節は初夏のころでしょうか?秋に稲穂が頭を垂れるようになるまで、いまは地固めの季節なんですね。
これまで、なんとなくぎこちなく、どこかお互い遠慮勝ちに見えた空気も久し振りに実さんに会ったら、なんかいきいきしていて実に馴染んでました。
言葉遣いもそうですが、自然な笑顔に癒されました。
これまで、家族に心配させまい、気遣わせまい~と精一杯、家族そして谷田部実になろうと一生懸命の実さんでしたが、いがったですね!
それにしても、谷田部家はいっつも「ありがとう」をはじめ、家族であっても感謝のことばがス~ッと自然に口から衝いて出てきて気持ちがいいですね。
きょうだけで、「ありがとう」何連発いったことでしょう。
お弁当手渡されて、「御茶入れっかね~」って言われて・・・何でもないようだけれど、実はすんごくありがたい事に感謝するだけでなく、きちんと「ことば」
にすることってとっても大切なことだと思うのです。
谷田部ファミリーだったら「阿吽(あうん」の呼吸」で済むことなのでしょうが、それでもちゃんとことばにして伝えている・・・
こういったちいさなことの積み重ねって、すごく大事な気がします。
言葉にしてもなかなか伝わらないことがたくさんある日々を送っているだけに、今日は考えさせられました。
綿引さんが導火線となってくれた・・・
それにしても綿引さんは、どこまでいいひとなのでしょう。いい人すぎて怖いくらいです。『どんと晴れ』の夏美(比嘉愛未さん)とどっこいくらいにホントいい人です。
美代子さんの捜索願の一件と、ふるさとが同じということだけで、普通ここまで尽くしてくれるでしょうか?
お父ちゃん見つかった~というみね子の手紙に、自分のことのように喜んでくれただけでなく、こうやって実さんに会いに来てくれるなんて・・・
もちろんみね子が不憫に思ってのこともあるでしょうが、あらためて綿引さんの誠実さに触れたような気がして、あったかくなりました。
今日は実さんと綿引さん、まじめに「まじめ対面」でした。
こんな実直な人が自分たち家族のために、長い間ほんとうによくしてくれた、血眼になって探してくれた~そのアツい想いがいっぱいになって破裂寸前のところで、実さんの写真なんか渡されちゃったらもうダメです。涙腺崩壊です。真面目すぎる実さんだからこそ、綿引さんの想いが伝わってきたのでしょう。
そして、綿引さんがお父ちゃんにつないだ、この想いは実さんを突き動かし、自分不在の空白の時間、家族がどんな思いで過ごしてきたかを知りたい~と思わせるようになるのです。
実さんが、美代子さんと茂じいちゃんを前にして、正座して「私がいなぐなってからのこと、くわしく教えてくんねぇが~」とお願いしたことからも、実さんの本気度が伝わってきます。
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涙の理由・・・
すべてを聞いた実さん。目の前にいる家族に自分はどんなにつらい思いをさせてしまったかを悟り、後悔と謝罪の念が入り混じった悔し涙だったのかもしれません。
しかし、それ以上にあらためて、家族の深い愛情に触れてのうれし涙成分も混じっていたのでしょう。
思いだせなくても感覚的に、こころの底のどこか深いところで彼らはつながっているはずです。
涙の理由もほんとうのところは実さんだけが知るところですが、夜うなされていた実さんの理由は僕には分かるような気がします。
みなさんは、たぶん「思いだしたくない、あの記憶」、つまりお金を盗られた時のシーンに実さんはうなされていたと思うのでしょうが、僕はやっぱりちがうと思うのです。
この実さんが二年半を共にすごした、実さんの記憶のあの人です。
ドラマでは紹介されてはいませんが、一人苦悩する実さんがそこにはいるはずです。
世津子さんの寂しさ、優しさを知っているだけに、自責の念と彼女を憂う気持ちに苛まれていると思うのです。
「涙の理由を」詞曲歌 伊藤銀次
またかと言われそうですが、世津子さんは今何を想っているのでしょう・・・
みんながしあわせにはなれない・・・分かってはいるけれどやっぱりやり切れないです。
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』第20週「さて、問題です」117話 8月16日放送分