教師への道は何も一つではないのです。社会人を経験したあなたの経験は、必ず教育現場でも生きます。
しかし、晴れて教師になるまでには、多くの困難も伴うのもこれまた事実。実際に通信で教員免許取得後、教師になって分かったメリットと免許の活用法を今日は紹介します!
通信制大学でのはじめての挫折
卒業学部は文学部英米文学科。アメリカ文学にずっと親しんできたことと、英語の成績が比較的良かったことで特に悩みもせず選んだ英文科。しかし、ロクに調べもせず入ったのが運の尽き!語学学習に力を入れている学校で、英語には悩まされました。学生時代は教員免許取得などおよそ思いもつかず、何の免許も取得せず卒業したのです。
一番最初に勤めた事務職を辞めた後、つなぎにと考えて勤めた学習塾が私の運命を変えました。それまではこどもは苦手という意識がどこかあったのですが、こどもの純粋でキラキラとした瞳に一発でノックアウトされてしまったのです。
即、小学校の教員免許を取得すべく通信制大学に3年時編入学しましたが、その科目数の多さと、レポート以外の提出物の膨大さ、そしてスクーリングの困難さの前に半年も待たずギブアップ!フルタイムの仕事をしていたから・・・は言い訳にもならないです。なさけない・・・
通信制大学2度目の挫折
調べたところによると、通信制大学正科生の卒業率は何と10パーセントであるというのです。教員免許取得だけの「科目履修生」でもこんなに大変であったのに、正科生卒業生恐るべしです!
塾は相変わらず続けていました。今度は、小学生とは異なる中学生という人種のひたむきさに打たれた私は、懲りもせず玉川大学の通信教育部に入学し、中高社会(当時は中学社会、高校地歴、公民が分かれてはいなかった)の教員免許取得のため、今度こそは貫徹することを自らの胸の内で誓ったのでした。
今でもそうですが、小学生のころから歴史小説が大好きでどうせ教師を目指すのであれば、好きな歴史に少しでも親しめる「社会」を選んだのです。今度はなんとか学習を続けていったのですが、「教職課程」「教員養成セミナー」という教師志望者が読む受験雑誌との出会いがこれまた運の尽きでした。
採用倍率という競争率が他の校種よりも飛び抜けて高く、絶望的と思われる倍率だったのです。特に高校日本史(それまでは、高校地歴でなく、科目ごとの採用であった)なんて毎年1人2人の採用である。百年の恋も一時に冷める~ではないですが、一瞬にしてヤル気が全く無くなってしまったのです。これまた情けない・・・
2度の失敗から学んだこと
今、冷静に挫折の分析をしてみて分かったことがあります。目の前の現実に一喜一憂して、頭の中で考え悩み堂々巡りの結果、結局何も手をつけず時間ばかりが過ぎ去っていってしまったことが敗因の最もたるものということです。
とにかく考えるよりもまず、教科書を読み、関係図書を探しだし読み、レポートを書きまくりどんどん送るしかないのです。既定のレポートが提出さればければ「科目習得試験」受験資格さえ得られないのですから。こんな単純なことが当時の私は分からなかったのです。
もう1つの敗因は「自己管理」がまったくできず、仕事があることを言い訳にしてきたことと言えます。これではいつまで経っても教員免許は、はるか遠く先でその影さえ拝むことができません。通信教育、特に通信制大学での学習は孤独、自分との闘いになります。孤独をどう乗り越え、弱い自分とどう向き合うかが勝負の分かれ目となるのです。孤独を楽しめるようになり、学習が習慣となれば、もうこっちのものなんですけどね。
最後の失敗の原因は、教師を目指す仲間等をまったく求めず、一人で乗り切ろう!としたことです。意志の強いものであればそれも可能かもしれませんが、同じ目標を持つ、仲間の待つ環境に身を投じることは、何よりも刺激になるし、目標達成がより現実となるおすすめの方法です。各通信制大学は、地方ごとに学習会、支部を置いて積極的に活動しています。これをまったく活用しなかったのだから、実にイタいですね!
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3度目の挫折?と3度目の正直!!
通信は自分でもあきれるほどの諦めの早さでしたが、教職への諦めだけはなぜか無かったのです。憧れだけで、全く行動が伴っていないわけですが、自分でも諦めなかったことだけは、すごかったと思うのです。「それでは、倍率の低いとこ(各都道府県、校種)探して、何が何でも免許取得だ!」と3度目の誓いを立てたのです。
最初に勤めた事務職で興味を持ち、日商簿記の2~3級を取得していたことと、当時は比較的多めの採用枠があったことで、「高校商業」一本に的を絞って日本大学の通信教育部商業学科に科目履修生として3年時編入学したのです。
同じ轍を踏まぬよう、仕事を持ちながらでしたが、毎日無い時間を無理矢理捻出し、睡眠時間を削りながらも、とにかく一歩でも前へ進むため頑張りました。そして地域支部の学習会にも顔を毎回出し、仲間から刺激をたくさんもらいました。
~とここまでは紆余曲折を経ながらも何とか頑張れましたが、どう頑張っても私の置かれている環境、学力、体力では修業年限の2年で終えることは不可能となってしまったのです。ここで諦めてはいままで2度の失敗挫折に加えて3度目の挫折となってしまいます。なんとかトリプルパンチのダメージだけは避けたかったのです。そこで、今度は万全を期すため、そして教員採用試験に備えるため退職することにしたのです。
このように、本気で目指すのであれば背水の陣で臨んだほうが良い場合もあるのです。心意気としては、両立させるということは素晴らしいと思いますが、現実的にはかなり困難なのです。
よく、常勤講師を長く経験していて「今年こそ!」という年にはキッパリと講師を辞め(もしくは非常勤に鞍替えして)、本採を目指す~というパターンがありますが、これは教員採用試験の現実を見据えての決断なのです。
通信大学生を悩ませるもの
「教育実習」・・・
私の職場は比較的、通信制大学生に理解を示してくれるところでしたので、すごく助かりました。2週間に及ぶ教育実習の現実を前に、仕事を持っている通信生はその期間、仕事をどうするか、職場にどういうべきか悩むことでしょう。
現在では教育実習に加え、小中免許取得の場合、「介護体験7日間」、そして「特別支援学校での実習2日間」と実に「9日間」の実習体験が義務付けられているのです。フルタイムの仕事では厳しいでしょう。年休有給消化、一時休職、退職の選択を迫られるのです。学校勤務でなければ教員免許取得に理解など示さない職場がほとんど。厳しいですがこれが現実です。
また、明星大学、玉川大学等の附属の小学校を持っている通信制大学であっても「教育実習先」は自分で確保しなければならないのです。これは普通に通学部に通う大学生には分からない苦労でしょう。小学校の場合はまだいいです。自分の出身校に依頼すればよいのだから。
私は高校は普通科を出たため、出身校に依頼をすることはできませんでした。そこで地元で「商業科」があるところ、科はないが商業科目を生徒に履修させているところすべてに依頼をかけましたが、最初の年はいろいろ理由をつけてすべて断られたのです。
現場の「教育実習嫌い」はなぜか?
この理由は、実際に自分が教師となってみてはじめてその理由が分かりました。たいていの学校は、「教育実習期間」と称して年に一回設けています。その期間が2週間であろうが4週間であろうが、その間も当然学校は廻り続けるのです。
実習生のための指導教諭も付けなければいけませんし、授業見学もあり、実際に教壇にも立たせなければいけません。実習生の行った授業はたいてい、あとからやり直しなのです。現場はただでさえ忙しいのですから、実習生などを受け入れる余裕など、ほんとうはどこにもないのです。正直言ってお荷物なのです。
しかし、みな教員は実習を経て教員となる訳なのですから、仕方なく「卒業生であれば引き受けましょう」といったところがギリギリの譲歩なのでしょうね。私の場合、卒業生でも何でもない、一度も行ったことも見たこともない「商業高校」に2度目の依頼の手紙と直々のお願いに学校へ出向き、その本気度を認めてもらって晴れて実習可能となったのでした。
このように通信制大学の場合、自力で「教育実習先」を確保することが求められます。これから通信制大学入学を考えている場合はまずこの点をクリアしてからでないと、とんでもないことになってしまうのです。
※「教育実習で「適性」「やりがい」はわかるか?~元教師が語る「私が、夢だった高校教員にならなかった理由」への反論と納得~」
※「教育実習、心の準備と注意点(絶対にやってはいけないこと)~最高の実習にするための7つの視点~」
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通信制大学、学習の実際とそのたいへんさ
私の場合、専門変えをしたため、自分で言うのもなんですが、本当に苦労しました。英文出であるから、英語の免許を取得すればもっとスンナリいったのかもしれませんが、私は米文学に興味はあっても「英米語」にはまったく興味がなかったので仕方なかったのです。
この教科、科目選択はあとあとの教師人生を考えた時にとても重要なこととなります。どうしてかと言いますと、自分が好きでもない教科の場合、情熱を持って教壇に立つことができないからです。本人だけでなく、生徒が一番かわいそうです。
実際、商業科に編入してみてビックリです! 簿記だけならともかく、一般教養でも苦労した経済学などはチンプンカンプンなのです。教科書は違う言語かと思うくらいまるで分からなかったし、今の通信制高校のように教員に教えを請うことも叶わないのです。自力で何とかするしかないのです。
1つの科目をクリアするために多くの参考書、解説書を読破しました。その専門性の高さと専門書の高いことにはビックリしましたよ。1冊が平気で4~5,000円することもあるのですから。「経済原論」なんて今でも夢に出てくるくらい悩まされた科目なのです。
何とかレポートを規定数出して科目習得試験を受けられることになって喜んだのも束の間。5回連続「経済原論」の試験に落ちた時は、教科書を燃やしたくなりました。その試験そのものが返ってくる訳でなく、ただ、「合格、不合格」がハガキで送られてくるだけだったのです。
当然、どこがダメだったのかなんて通学制のように教授に聞くこともできないのです。正直泣きたくなりました。必修科目であったので「選択」でなくて、「義務」です。経済原論は国家資格の不動産鑑定士の試験科目でもあったので、基礎から解説した予備校のレジュメとビデオを入手し、血眼になって学習したのが今ではいい思い出ですね。
このようにある程度の基礎学力もないまま通信制大学に進むのはすこし危険かもしれません。まして高卒で正科生として入学し、卒業を目指すとなれば、想像を絶する努力と根気が要求されると思います。
通信制ならではのメリットも実はたくさん
これまで気が滅入るような話ばかりになってしまいましたね。実はその分、メリットもたくさんあるのです。そのメリットについていくつかに分けて話してみましょう。
①学費が爆安!
私が入学したはるか前は、3年編入時で確か8万弱、次年度は5万程度でした。現在の学費は「日本大学 入学案内 学費」を参考にしてください。正科生でも初年度「148,000円」と爆安です。今の世の中、私大文系でも初年度納入金は「1,200,000円」程度はかかるのです。何と10分の1程度の学費で学べるのです。科目履修生であったならもっと安く済みます。これは大きいです。
②多種多様な免許の取得が可能
現在ではこれまで、通信で取得するのが絶望であった「保健体育(星槎大学のみ)」「音楽(明星大学、大阪芸大等)」そして「理科(明星大学のみ)」までが取得できるのです。
そのほか、主要教科は言うに及ばず、福祉、情報、芸術等、その気さえあれば学び放題でなのです。(二重学籍は禁止)
③仕事を続けながら学べる
多くの困難も伴いますが、職場の理解があれば学生を続けることは可能となります。またこういった経験は教育現場でも必ず生きてきます。教師という仕事はやりがい、いきがいに溢れる仕事ですが、辛いこともたくさんあります。こういった時に、困難に耐えうる力強さ、バイタリティを通信制大学出身者は活かしていってほしいのです。
④自己管理、時間管理に強くなれる
これができないと免許取得、卒業終了まで漕ぎつくことは困難なのですから、強くなるのも当然ですね。私の場合、集中力というおまけも付いてきてうれしい誤算でした。
⑤現場でこそ、この経験が生きてくる
教師が、苦労して学んだ経験は自分が教師となった時、必ず自分の言動に影響を及ぼすはずです。「待てる」余裕であったり、相手への共感力であったりもします。ぜひ、通信での経験を現場で活かしてください。
通信差別神話ってほんとう?!
ネット上では、通信制は採用でも現場でも「差別」されるなんて記事をたまに見かけますが、現場を知っているものであれば、このような嘘八百は恥ずかしくて書けないはずです。
断言しますが「ない!」のです。私は、地元で採用になった年に他の県も複数受験しましたが、遠くはなれた鹿児島県でも合格しています。土台、どのようにして免許を取得したかという手段、方法にこだわって何のメリットがあるのでしょうか?
むしろ苦労難儀して卒業、取得した経験が買われるはずです。現場は多少のことではへこたれない、打たれ強い、精神力の持ち主を求めているのですから。
また、同僚間で、出身大学、免許の話など、ほとんどした経験はありません。むしろ小学校あたりでは、教育学部でストレートに教員になったものに加え、普通の大学を卒業後、通信で免許取得の参入者も一定割合で必ずいるのです。現場では通信は当たり前にさえなっているのです。
「教員免許」取得後の世界
「教員採用試験一発合格」という相当の実力と運との両方を持ち合わせたラッキーな人以外は、常勤講師、非常勤講師といった非正規の職を希望することになります。望めば誰でも即!という訳ではありません。あくまでも正規で埋めることができなかった枠を補うポジションが非正規なのです。
ただ、校種(複数所持の場合)と就業地にこだわらなければ本当にたくさんの働き口が見つかりますよ。これは有難いですね。私など「高校商業」という比較的需要の少ない校種教科ですが、高校商業であっても場所にさえこだわらなければ、非正規ではありますが奉職の口を見つけるのは比較的たやすいです。
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先日、大学卒業後ニートを長年経験してきたので、脱ニート、そして就職を目標としている方の相談を受けました。今は、どんな仕事でもとにかく働きたい!という気持ちでいっぱいであるというのです。彼が今、受けてきたストッカー品出しの面接は時給「850円」だと言います。これさえ、合格するかどうか自信がないそうです。
教師の働きを時給に換算すればいったいいくらなのでしょうか?時給単位ではない、常勤講師、教諭はさておき、非常勤講師はコマ給計算となりますね。私が公立退職後勤務していた私立校では、1コマ「3,200円」でした。
50分授業で「3,200円」です。週3日勤務。週15コマ持っていたので単純計算で月「200,000円前後」になりました。「週3」日でですよ。職業に貴賎はもちろんありませんが、時給では確実に差別されるのが、変わりがすぐ見つけられる単純労働従事者です。
教師を目指す中、比較的自由な時間が確保できる「非常勤講師」はおすすめです。現場で授業実践をしながら現金収入がある。これは何とも有難いことではないですか。その変わり、本当に授業にのみタッチできるだけであり、その他はまったく非常勤には期待されてはいません。
いわゆる「お客様」扱いです。各自治体によっては、教員採用試験において、常勤講師経験者を優遇する制度は存在しますが、何はともあれ実力が伴っていなければ始まりません。授業実践を積みながら、早く教員採用試験に合格するのが一番の近い道かもしれません。
そして、結論!
通信制大学で自分を変えよう!
通信制神話は嘘八百!
メリットの陰に大変な苦労が・・・
強さと継続さえあれば乗り越えられる
本気で目指すなら、非常勤講師!?
「美しき狼たち」作詞 たかたかし 作曲 鈴木邦彦 歌 水木一郎