こどもから手をつないできたり、肩によじ登ってきたり~と、この時期のこどもならではの魅力いっぱいの学童保育(放課後児童クラブ)ですが、学童に転職するにあたって、事前に知っておいたほうがいいこと、やっておかなければならないこと、そして実際の学童実態を今日は話していきます。
保育士、幼稚園教諭、小中高教師とはまた違った魅力について迫ります。
学童保育とは?
学童保育とは、親が共働きで放課後自宅でひとりになってしまう児童に学びと遊び、そして生活の場を提供し、指導員が小学生の放課後生活をサポートしている保育事業をいいます。当然、児童の安全が約束されており、安心して生活できる場所でなくてはなりません。
これまでは、小学校3年生までがその対象であったところがほとんどでしたが、最近の制度改革に伴い、6年生まで受け入れ可能となりました。
①指導員の勤務時間
預かり時間は、1~2年生が学校から帰ってくる、12:30くらいからだいたい19:00までの所がほとんどで、一部民間の事業所などでは20:00~21:00の延長保育を認めているところもあります。従って正社員は正味8時間勤務ですので、児童が学校から帰ってくる前より勤務することになります。アルバイト、パートの場合は、一日4~5時間がほとんどでしょう。
ただし、小学校には長期休暇がありますので、この期間はどこの学童も人手不足で本当にたいへんです。一日8時間以上の勤務をお願いされることもザラでしょう。因みにこの長期休暇中は朝6~7時からのスタートになるところがほとんどです。すべては利用者サイドの便宜が第一なのです。あとあと話しますが、ちょっとハードですね。
パートさんは別としてアルバイトだから、1時から5時までの勤務、そして夏休みなども同じ時間帯で勤めたい~などという気持ちは分かりますが、現場ではかなりいずらくなる雰囲気です。(最初からそのような条件で入職したとしても)ご存知のように正社以外の非正規がほとんどの職場ですので、学生も当然多いですが、かなりの割合で主婦層もがんばっているのです。
当然この方たちは家庭がありますので、夕方にはみんな帰りたいですし、長期休暇もみんな休みをまとめて取りたいのです。
また、土曜日は事業所によって休みかどうかは異なりますが、最近では日曜日も受け入れている民間事業者もいるくらい、利用者の需要に応じている現状です。特に都市部では保育に求められる質が高いものとなっているうえ、時間は伸びる傾向にあります。
②必要な資格や経験は?
新資格「放課後児童支援員」の資格は間違いなくあったほうがいいでしょう。こちらは、資格取得にあたり一定の条件があります。(保育士、教員資格所持、高卒後2年以上の保育事業に従事等)この資格は各自治体の研修を受けるだけで、誰でも取得できるものですので転職を考えている方はおすすめです。
これから学童保育事業は伸びて行く業界ではありますが、入職に当たって人手不足も手伝い、まだまだ何らの資格、経験も問われないところが多いのが実態です。しかし、保育士幼稚園教諭、小学校教員等の隣接資格、経験はあったほうがすべてにおいて有利に働くことは間違いありません。
③待遇、収入
待遇、収入を第一に考え優先させるのであれば、学童はまったくおすすめできません。自ずから選択肢からはずれることになります。待遇、収入ともにいちばん優遇されていると言われる、都市部の民間事業所正社員でさえ、月額20~25万円程度です。賞与、手当等は出たとしても2.0ヶ月程度がいいところです。
ましてや地方に行くと悲惨な待遇になります。もともと学童の正社員求人自体が極端に少ないうえ、あったとしてもせいぜい15~16万円、賞与ゼロもしくは1~2ヶ月も出れば御の字です。パートアルバイトは時給制ですが、私が調べたところ一番低いところで「750円」でした。資格経験の有無にもよりますが、だいたい800円~1200円が相場です。
こどもたち、親からみた学童保育の魅力
学童保育に勤務するサイドから見た魅力について探る前に、利用者である親、こどもの側から見た学童のメリットについて知っておくことも無駄な事ではありません。常に親御さん、こどもたちの視点に立った指導、対応が求められているからです。
①両親ともに、安心して働きに出ることができる。
②費用が比較的安く済む
③おやつ、軽食が提供される
④しつけ、子育ての悩みを共有できる
⑤小学校と違って、異なる学年の児童(上も下も含めて)との生活の中で得られるものが大きい
⑥長期休暇中、預かってもらうことにより、この期間中とても助かる
⑦小学校教職員、保護者とは違った大人との接触により、こどもの成長上望ましい
・・・と挙げたらキリがないのでこのあたりで止めておきますが、やはりいちばんの魅力はなんてったって⑤でしょう。小学校では各クラスに属し、横並びみんな同じ年のこどもとの付き合いがほとんどです。まして、小学校では部活動がありませんので年の違うこどもと生活をともにすることは稀です。昔は自宅を中心とした地域ごとに放課後は高学年のこどもを大将とした遊びのグループがあったものですが、いまやガキ大将などは化石のような存在かもしれません。
学童のような環境下で、上下の人間関係や集団行動を学べるのは、学校、塾にはない学童最大のメリットといえるでしょう。泣いた泣かせるなどいろいろな経験の中で、弱い者小さいものは守らなければならない気持ちを高学年のこどもが持つことにより、低学年のこどもは年長を敬うこころが養われていくのでしょう。コミュニケーション発達学の観点からも、早いうちからさまざまな人間との接触がよい影響を及ぼすことが証明されているのです。
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学童保育勤務の一日
学童保育は学校教育法管轄下の「学校」ではありませんので、その活動内容は事業所にもよりますが、かなりの自由度があります。いちばん最優先させなければならないのは、当たり前のことですが児童の心身の安全を図るということです。
そうなのです。児童の身の危険を避けるだけではダメなのです。「こころ」の部分も含まれるのです。学童保育で「いじめ」が存在すると思われるでしょうか?同学年同士だけではなく、実際存在するのです。このように、指導員には児童が安心してなごめる場所を守り抜くという責任もまたあるのです。からりの自由度はありますが、責任もまた重く、体力的にもかなりのハードワークです。
①下校の出迎え(児童がかたまって下校してくるパターンと父兄が送ってくる場合とがあります)、父兄とのコミュニケーション
②宿題、課題学習
学年ごとに帰ってくる時間は異なりますので、帰ってきた順に児童の学習を見て行きます。
③外遊び、中遊びの監督、付き合い
④おやつの調理、いっしょにおやつを食べる
⑤各自自由時間
⑥そうじ監督、いっしょにそうじ
⑦お迎えの保護者への報告とあいさつ
⑧すべての児童の御迎えが終わったあとの残務処理
この他、私が勤務した学童では、各指導員が日替わりでイベントを毎日計画して行っていました。1週間に1回は各自イベントを考えるのです。楽しいですよ。また、長期の休暇中はまるまる一日彼等と生活をともにすることになりますので、この間のスケジュールはまた異なったものになります。
ほとんどの学童保育ではこのようなパターンでしょうが、民間の特化した学童では、スポーツ、英語、学習、音楽アートなどさまざまな専門家スタッフのもとでお金と時間をかけて展開しているところがあります。こういった需要は増大の傾向顕著で、保護者の学童に求める質の、転換期に来ていると言えるでしょう。学童スタッフもまた、何かオリジナルな何かが求められる時代なのです。
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学童保育勤務の魅力
私の知人で小学校教諭の職をなげうって、学童保育に転職した人がいます。その人の理由を紹介した方が、学童の魅力が如実に浮かび上がってくることでしょう。
①職場での人間関係ストレスからの解放
②カリキュラム、時間に縛られない自由度の高さ
③児童と触れあう時間の多さ
④ひとりの児童を1年から6年までという長期間に渡ってみることができ、その成長に関われる
⑤小学校の父兄はとにかくうるさく、批判的であるが、学童の場合は比較的協力的
⑥仕事量の違い、たいへんさの違い(ほぼ残業なし)、シフト制だが比較的休みが確保できる
~などを挙げていました。また、ほんとうに小さいこどもを預かっていた保育士さんからみたら、小学校児童は幼児よりは意志の疎通の幅が大きく、コミュニケーションが取れる分、やりがいもまた出てくることでしょう。いくら疲れていても、こどもの何気ない一言で癒されることっていっぱいありますものね。
このほか、必ず「お迎え」がありますので、毎日父兄とコミュニケーションをとることができ、こどもへの理解が深められるのもこの仕事のいいところです。学校の先生ですと毎日、顔合わせるのはまず無理でしょう。
こどもらしさ、地の部分が前面に出てくるのも学童保育ならではです。学校では見せない表情を見せてくれたり、学童では皆勤なのに、学校は休みがち~なんて聞くと不謹慎ですがなぜかうれしくなってしまいます。そんな飾らないこどもたちと学校とはちょっとちがった切り口で接することのできる学童は、気負わず仕事ができる夢のような職場なのです。
学童保育勤務のたいへんさ
①まずは、ある程度の体力がない人でないと務まらない、勤めあげられない現実
女性だから、年取ってるから~なんて関係ありません。指導員のほとんどが女性なんですから。盛夏の炎天下だろうが極寒の冬空だろうと、こどもは許されれば一目散に外へかけだします。一緒に活動できればベストですが、少なくとも事故の起きないよう外へ出て監督にあたらなければなりません。
低学年はまだしも、高学年男子となりますと大人なみの恰幅になるこどもも当然います。そういった荒れる児童、指導困難な児童の指導にも当然あたることになります。よく、こども相手だからカンタン~などと安易に考えて入職し、「即」やめていくひとたちをたくさん見てきました。体力的にこんなにキツいとは思わなかったとみな言います。
②気力も必要!
児童間のトラブルはしょっちゅう~毎日というか、日に何度もある時だってありますよ。こういったこどもの間のもめごとの仲裁に入ったり指導したり~くらいだったらいいのですが、親同士のもめごとに発展してしまう時などは、指導能力、対処能力が問われることでしょう。父兄との日ごろからのコミュニケーションが欠かせません。
③ある程度の学力は当然必要
私は元高校教師でしたので、小学校の算数、英語(勤務していた学童ではありました)程度は何とか大丈夫でしたが、この学力に自信がなく辞めてしまった主婦の方がいました。学童にもよるでしょうが、最低小学校全科の教科書には目を通し、なんとか理解、解けるくらいのレベルまでにはなっていたほうが、あとあといいでしょう。
④こどもはスキキライがハッキリ!
こどももまた人間ですから、人間、大人の好き嫌いが当然あります。でも、大人のように偽ったり忖度はしてくれません。モロ、スキとキライをはっきりさせます。(中には大人な児童もいて、こっちを気遣ってくれる奇特なこどももいますが)指導員もこどももまた人間・・・でしたらウマが合う、合わない~は当然出てきます。ここでいちいちクヨクヨしていたり、根に持つ粘着質な人は止めておいたほうがいいです。お互いのために。
⑦小学校敷地内、校舎内に設置の学童は何かとたいへん
もうこれはお分かりかと思いますが、事あるごとに小学校の教員が顔を出すだけでなく口まで出してくる時があるのです。協力的でお互いに児童に寄り添っていこうというスタンスだったら有難いのですが、あからさまに指導員を見下したり、用もないのに居続け無駄話を何時間もやられたら誰だって困りますよね。極端な例かも知れませんが、何かと便利である一方、面倒な事に巻き込まれることもあるということです。
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⑧しつけもまた仕事のうち
小学生1年から6年まで~この年齢の幅は大きいです。自我、性の眼覚めに至る高学年から、まだまだしつけが必要でおもらしさえしてしまう低学年まで、本当にさまざまです。
すべての学年にわたって、「しつけ」は学童指導員の重要な仕事の一つです。「おかえりなさい、いってらっしゃい(学童はこどもの2つ目のおうちなのです)」「さようなら」「ありがとう」「ごめんなさい」まだまだ、こんな一言が言えないこどもたちだっているのです。
人間としての礼節や品位、マナー、口のきき方、コミュニケーションの取り方・・・この時期にさまざまな人と接していく中で誰かがリードしていってあげなければならないのです。
人間としてやってはいけないことは、こどもだからと言って許されるものではありません。こういった「指導」と一緒にまた「しつけ」も重要味を帯びてくるのですからたいへんで責任重大です。
こういった「しつけ」は本当に根気のいるちょっとしんどいかもしれませんが、別の見方をすればとってもやりがいのある仕事だと思います。塾、学校とはまた違った切り口でこどもたちと日々接することができるのですから・・・
⑨人数の多さに圧倒される・・・
小学校での1クラス定員は、現在では26~35人までが全国で過半数を占めています。しかし、学童ではそうはいきません。私は3つの学童しか渡り歩いてはいませんので、すべてとは言いませんが5~60人ザラ!一番多いところは90人いました。これらの子どもたちが一つ屋根の下、同じ空気を吸うのですから何か、必ず起きます。おもしろいといえば面白いのですが、忙しい、ザワザワしたのが苦手~という方はちっちゃな事業所を選んだほうがいいかもしれません。
※これは「たいへんさ」とはちょっと異なるのですが、一応付け加えておきます。
学童で「学習指導」をメインでやりたい!~と思っている人が入職したらちょっと面食らうかもしれません。民間の学童では学習支援に特化した学童もどんどん設立されてきてはいますが、現在のほとんどの学童では「学習指導」は提供サービスの一パートであってメインではありません。そのような方は、やっぱり小学校教諭、学習塾で勤めたほうがよりハッピーです。
どうでしょう?ますますヤル気が出てきましたか?本音で、なんら飾ることのない児童と生活をともにする学童勤務は、この仕事ならではの魅力がいっぱいです。この魅力に比べたらたいへんなこと、デメリットなど霞んでしまうと私は思いますが、人によりけりです。
まったくの初めての方は、入職前に一度体験してみることをぜひおすすめします。これをいやがるようなところは、最初からやめたほうがいいです。あなたを待っている児童がたくさんいます! 思い切って、はじめの一歩を踏み出してみませんか?