水泳、バスケットボール、卓球、硬式テニス、陸上部~と、講師時代も含めて、これまで経験してきた部活動顧問そのすべてが運動部でした。陸上のみが学生時代競技歴がありましたが、あとはすべて未経験で中高生のころ、体育でかじった程度でした。
まったくの未経験で興味も微塵もないのに、あなたが新学期明日からたとえば「男子バレーボール部」の顧問よろしく~となったらどうしますか?あくまでも希望ではなくて、この場合は強制&決定です。
少しずつではありますが、この不思議な顧問割り当て貼り付けも外部の専門家のパワーを活用する方向に動いてはいますが、まだまだ現状は、多数の競技未経験の教員の尽力により部活動が成り立っているのです。
部活動ブラック問題、そして部活動が本来の教員の業務にはあたらないという問題は、これまで他で話してきましたので敢えて、ここでは話しません。現状がそうなっているのであれば、現実と向き合わなくてはなりません。人によって問題解決に対する姿勢、実践はさまざまです。教科書通りの正解なんてありません。自分で自分と対峙して実践していくしかないのです。
実際、私の経験から未経験であってもどのように未知なる部活と立ち向かい、生徒と付き合い指導していったかを今回は話していきます。
初任、新任の希望はまったく聞かれず、ほぼ運動部!決定!
嘘ではなく、本当です。余程華々しい競技歴があってその道のスペシャリストでない限り、希望などまったく聞き入れられず、学校の都合&事情によって貼り付けられます。たとえば中高とバスケやってたからといってバスケ部の顧問になれるとは限らないのです。(もちろん現役時代、華々しい競技実績があったり、現役のプレイヤー、アスリートは当然考慮されます)
赴任校の顧問の欠員状況、その他もろもろの大人の事情によって決まるのですから、初任新任者の希望は後まわしにるのも当然ですね。複数年勤務している場合は、年度末近くなりますと(たいていは12月下旬くらい)、部活動顧問に限らず、担任、所属学年、各種セクションの希望調査があり教頭が取りまとめて調整のうえ、これでなんとか次年度は頼む~とあいあさつまわりで忙しくなります。
当然、経験者(好き、やりたい)から貼りつけとなり、あまった(誰も希望しない)穴を新任と初任に強制的に割り付けるのです。これは、初任に職員室入口の末席をあてがうのと同じく、学校の悪しき慣習といえるでしょう。
赴任する前に既に決まっているのですから、希望どころか強制です。残り物には福がある~だったらいいのですが、そうそう現実は甘くはありません。残っている部活等はたいてい、おそろしく専門度が高いものであったり、尋常でないほど熱心に活動している部活動が多いこともまた事実です。
熱心イコール活動時間長い→教師もたいへん~といった図式です。そういった部活動には誰も希望を出そうともしないのも何となく分かります。
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現実が現実!受け止めるしかない!
以前、教師歴の若い方から、この未経験顧問問題について相談を受けたことを思いだしました。彼は女子バレー部の正顧問になりましたが、まったくの未経験です。おまけに副顧問は競技経験者、そして外部委託コーチまでつくというではありませんか。彼なりにいろいろ勉強したり、足しげく体育館に通い練習を見学をしたり~とがんばったようですが、ある日を境にプツリと糸が切れてしまったようになり、それ以来部活に顔を出すことがなくなってしまったということなのです。
それ以降は完全な引率顧問(各種大会の引率だけを引き受ける顧問、もしくはそれしかやらないと決めている教員を指す)になり下がってしまったというのです。
詳しく事情を聞きました。副顧問とコーチのみが前に出てきて、彼をまるでいないかのように扱い、蔑視するような態度が生徒にも伝わってその場にいるのがとても耐えられない状態だったそうなのです。それ以降は部活動に関する事務、各種手続きそして引率に専念してしまったのでした。
彼には一度、全体で自分はこういう考えだけれど、自分に何かできることはないか?と投げかけ、例えばボール拾い、ランニング等自分のできることから始めて行き、とにかく生徒と一緒に何か身体動かすことをすすめました。
そして、生徒のいないところで副顧問とコーチと話し合い、これからの顧問としての関わり合い方を十分に話し合い、何でもいいので生徒の見えるところでの役割を持たせてもらえるよう話すことをすすめました。極端なはなし、正顧問という立場から思いきった態度に出ることも可能でしたが、彼の現状を鑑みた時、それは得策ではないと判断したのでした。
彼はその後、わずかのブランクはありましたが、奮起しました。うまくトスを上げられるようになるのが目標でしたが、スパイク練習のためのボール上げの練習に励み、いろいろな練習での役割を果たしていくようになりました。
部活が終わってからたまに、他の仲のいい同僚に頼みこんでレシーブ、サーブだけの練習に特化していたのだそうです。私はあまりよく分からないのですが、サーブのピンポイントでの打ち分けをコーンなどを使ってやり抜いたそうです。
そういった彼の行動の変化が伝わったのでしょう。生徒の中でも彼の練習に付き合うものが出てきたそうです。早く一年が過ぎて行ってほしい~と言っていた彼ですがなんとなんと次年度も部活動希望欄に「女子バレー部」と書いたそうです。
未経験部活動、私の場合・・・
もともと楽天的且つ前向きな性格(自己分析)だったので、一丁やったろう!この際、生徒使ってうまくなったろう!位の気持ちで入りました。(あくまで自分に活とリキを入れるためです)それでも気合だけでは何とかならいのです、やっぱり。
でもやるしかなかったですね。強制だろうが何だろうが、一度全体で決まったものを投げ出すということがいやだったというより、生徒に対して恥ずかしいという気持ちが当時はあったのかもしれませんね。
初任で貼りつきと相成った男子バスケなんかは、荒くれぼっちゃんがストレス発散でたまに遊びでやってるみたいな部活動だったのですが、学生時代バリバリの部活を経験してきた私にとって、ルールに則ってバスケをやってるというのに、部活自体に規律、ルールがないのがまったく許せませんでした。
まったくの未経験ということで私をなめていたのでしょう。いつもどうり?時間にはルーズ、あいさつ言葉遣いもまるでなっていません。往々にして強い部活は、ここがしっかりしており、顧問をそのことをわきまえております。
まずは、バスケ以前の問題なのでルールづくりから着手しました。顧問が未経験であろうが何であろうが、従えないものは去れ!のスタイルを貫き通しました。遊びでやっていたものの数名は退部して、担任からは大分クレームが入ったりもしましたが、決定を覆す怖さは経験済みでしたので頑として譲りませんでした。
悲しいかな、それでもやっぱりバスケに関しては未経験です。笛さえ吹けません。そこでまずは笛を吹けるようになるまでルールブックを頭に無理矢理詰め込み、彼らの練習もルールブックと比べながら見るようにしていったのです。審判ができるようになると不思議な事にバスケに興味が湧いてくるのですから不思議なものですね。
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もともと陸上部で脚力と持久力には当時は自信があったので、今度はルーチンワークトレーニングに参加するようになり、それ以降はゲームにもカットマンとして参加するようになりました。何でもだんだんとできるようになることは面白いものです。今度はフリースローがなかなか決まらないのが悔しくて暇さえあればこればっかりでした。いつの間にかバスケが少し好きなっていったのでした。
バスケ以外にも卓球、硬式テニスも全くの未経験でしたが、まずは自分自身、初心者の生徒に混じって同じ初心者として競技に取り組むことから始めました。ただ、忘れないように常に念じていたのは、部活動の顧問であり指導者であるということです。
顧問というのはその競技自体の指導だけの役割を与えられている訳ではないはずです。部活動を通じて何かを共有し、伝えていかなければならないのです。その「何か」は自分自身で見つけていくしかないと私は思います。
イヤダいやだ~と思っていれば、本当にいやなモノとなってしまい、その思いはもちろん生徒にも伝わります。どうせ、やる!と決まったのであれば、何でも前向きに積極的に取り組んだほうがいいのに決まっています。
前顧問がその道のスペシャリストであっても自分のスタイルで貫き通せばいいのです。その方針が理解が得られるまっとうなものであるのなら、何も恐れることはありません。必ず付いてくる生徒はいるはずです。
私自身、前顧問が競技者の卓球部を未経験で引き継ぎましたが、前は前、今が現実!と彼等のこれまでの経験、意見を尊重しつつも、自分の考えを実践していきました。そのためにはもちろん自分なりに努力をしました。
学校のマシンで彼らが帰った後、ひたすらレシーブ練習、卓球教室にも土日部活のⅡ部練(午前と午後の練習があるのです)終了後、1年間通い続けました。スマッシュが決まった時のあの爽快感は今でも身体が覚えています。うまくなってくると彼等の眼付もかわってきます。これまでラリーだけの相手だったのが、少し実践練習にも参加できるようになった時はほんとうにうれしかったものです。
運動部に限らず、生徒とともに何かの目標に向かってひたすら努力することによって、授業等では決して得ることのできない「何か」は必ず、そこにあるのです。その「何か」に賭けてみるのもステキなことだと私は思います。「共感」、「体感」という頭よりもこころ、感覚、カラダで感じるものを私は信じたいです。
追い詰められていく現実!
でもですね、誰もがみな、私のようになんとかなります!何とか頑張ってください!などと無責任な事をいうつもりはさらさらありません。それぞれいろいろな考えがあり、力量、キャパシティもさまざまだと思うのです。
教師すべてがオールマイティ、スーパーマンである必要はないし、土台そんな事、無理ですよね。第一、教職員全体がスーパーマンであったら児童生徒が息詰まっちゃいます。学校もまた、児童生徒、教職員ともどもいろいろな人間がいて許される場だと思うのです。
この強制貼りつけ制度自体に無理があるのですから、そこから漏れてくる人間が出てきて当然です。私も当時は若かったから、何とか切り抜けられただけかもしれません。「いま、ヤレ!」と言われたらできるかどうか、体力的にあまり自信はありません。
部活動顧問が原因で学校を去っていった同僚のことを思う時、「一体全体、何のための誰のための部活動なんだろう?」と深く考え込んでしまったのでした。
鬱になって学校を休職したり、去っていくよりかは自己防衛のために、制度的に強制になっているのであれば、せめてもの抵抗として部活動との距離を考え直すのも、一つの選択肢として頭の隅に置いておくのもいいかもしれません。この選択が良いものかどうかは別として・・・
実際、私が副顧問であった時の正顧問はこういったスタイルでした。平日休日含めて一切練習には顔出さず、休日の大会、練習試合の引率もまったくなし。しかし、平日授業日の大会引率だけは喜んで引き受けるスタイルでした。
朝の職会での大会参加報告なんて、自分が引率もしていないのにあたかも自分が行ったように臨場感あふれるように発言するのですから三文役者顔負けです。極端な例を引き合いに出しましたが、つまり、こういった事がまりとおるのもまた、学校ならではのことなのです。
部活動、生徒とどう付き合っていくのか?それはすべてあなた次第なのです。私の経験からすれば、よほどの大会常勝校やスペシャルな集団ではない限り、生徒が顧問に求めるものは自分たちに寄り添って見守っていってくれるか、その真剣度のみなのです。
シャカリキになって部活に邁進するのも、テキトーに付き合うのも自由です。ご存知のように教員文化とでもいうのでしょうか、他の領域に踏み込むのはタブーとされていますから。しかし、生徒だけは、しっかりと顧問であるあなたの言動はつぶさに見られていることはお忘れなく。
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あなたを待っている生徒がいるのです。「何か」を見つけに、まずは一歩を踏み出してみませんか?自分のこれまで経験したことのない世界を知るのってステキなことですよ、きっと!!
そして結論、まとめ!
①何でもまずは、やってみる!
②好きこそ物の上手なれ!
③自分と対話して、時には適当な距離を置くことも視野に!
④教師の真摯な態度を生徒は見逃さない!
⑤すべては自分次第!